彼は、自分にはないモノを持っている。
そう感じた―――。
25.無力
近付いてくる足音と話し声に、シリウス等だと気付いたピーターは猿轡をに付け直す。
「僕が彼らを何とか説得するから」
彼女に付けている最中も、彼はずっと「ごめんね」と繰り返していた。
付け終わって彼女から離れると扉が開く、ピーターは間に合ったと心の中で安堵の息を付く。
「ごめんね、ピーター。待たせてしまって」
先に声を掛けたのはリーマスだ、ピーターは「いいよ」と首を横に振る。
彼らに不自然なところを見せないように、必死に平常を保って見せるもその心臓は大きく脈を打っていた。
シリウスとジェームズがの前に立ったのを見て、ハッと息を呑む。
「シリウス、ジェームズ!」
二人が振り向いた。
震える身体を両腕でしっかりと抱きかかえながら、掠れそうな声を出す。
「止めようよ、こんな事…。間違ってる!」
叫ぶように言った。
目頭が熱くなってくるのを感じる、涙で視界が少しぼやけた。
シリウス等は眼を丸くしてこちらを見ている。
ぽかんとしていた中で、リーマスが小さく苦笑した。
「ピーターは、優しいからね」
と、肩に手を置く。
「でも、こいつだけは許せない」
空気が喉を通り、ゾクゾクとした感覚が這い上がってきた。
背中が凍り付くこの感覚。
リーマスの冷たい声に、眼に、表情に、声が出せなくなった。
リーマスがシリウスに何かを言うと、ピーターの前に立ちはだかる。
「ち、違う……」
ゆっくりと顔を横に振る。
僕は優しくないんだ。
ドロドロとした感情が自分の中で渦巻いて、ただ自己満足のために此処にいる。
現に君らを騙しているんだ。
「違う、違う、違う!!」
どんなに声をあげても、彼らは聞き入れてくれない。
シリウス等が再びに向き直ったのを見て、在ることに気付く。
「(そう言えば……、何をするんだっけ?)」
ピーターは自分が作戦の内容を聞かされていないのを思い出す。
胸がざわついた。
ジッとを見下ろすその姿に、えも知れぬ恐怖を感じる。
「待って、シリウス、ジェームズ!」
眼から涙がこぼれた。
二人を止めようとしたが、リーマスの方が力強く動くことが出来ない。
それでも必死に抵抗した。
「シリウスっ、ジェームズぅ…」
どうして僕には力がないんだろう。
力が有れば、リーマスの手を振りほどいてを助けれるモノを。
力が有れば、シリウスとジェームズを止められるモノを。
涙で前がハッキリと見えない、ピーターはグッタリと膝をつく。
「―――やめて!」
混声を耳に留め、ピーターがシリウスの陰から一瞬だけ見たは。
髪が黒くなっていた。
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UP/06.03.15