この薄暗い部屋の中、ピーターは自分の前に横たわる人物を見て、ごくりと生唾を飲み込んだ。
24.対面
はグッタリと気絶しており、口には猿ぐつわ、両手足は紐で縛られている。
どうやって連れてこられたのか、所々に見える青あざが痛々しい。
ピーターはただジッと、が目を覚ますのを待った。
「んっ…」
が小さく身じろぎをした、どうやら気が付いたらしい。
ピーターはガタガタと音を立てて、椅子を盾にその後ろへと隠れた。
彼女はゆっくりと身を起こし、周りを見回してピーターを見つけると睨み付ける。
ピー他は小さく悲鳴をあげたものの、グッと身体に力をこめて、その身を一歩前に出した。
震えた声で必死に声を発す。
「あ、あの! 僕、君と話がしたいんだ」
ピーターが近付くと、ジリジリとは後退る。
視線だけを動かして辺りを窺っているようだ。
「あ、ココには僕だけ。シリウス達はいないよ」
恐る恐る、その猿ぐつわに手を掛ける。
「お願いだから、言霊とかは使わないで、ね?」
静かに外すと、彼女は大きく息を付いた。
ピーターと視線を合わせると短く呟く。
「どう言うつもり?」
ピーターはビクリと身体を大きく震わせた。
彼女から視線を外し、俯きながらもポツリポツリと呟いた。
「僕は…、知ってるんだ。君のこと」
は目を見開いた。
何を知っているんだと、背中が冷や汗をかく。
彼はそんな彼女の様子を知ることもなく続けた。
「僕達は間違っていて、には何の非もないことを。あ、名前で呼ばれるの嫌?」
チラリと上目遣いで彼女を見た。
は途惑いながらも首を横に振る。
一瞬、何を言われたか分からなくて、数秒遅れてその言葉の意を理解する。
まさか彼らの中に真実をしるものいたなんて、思ってもみなかった。
少しだけ心を許しそうになったのを、罠かもしれないと思い直し、彼を睨み付ける。
彼女が警戒を解かないのを見て、ピーターは悲しそうに眉をたれた。
「僕は君を助けたい。でも僕はシリウス達に立ち向かうほどの力を持ってない…。ごめん」
最後は小さく呟いた。
はピーターの台詞を聞いて、酷く胸がむかついた。
「私を助けたい? 笑わせないで。私はそこまで落ちぶれてないし、助けを求めてなんていないわ。あなたなんて何も出来ないくせに。…そう言うのってむかつくのよ、―――偽善者」
最後の言葉が、ピーターには心臓を握りつぶされるような感じがした。
震える身体をギュッと押さえ、彼女を見つめ返す。
「確かに、偽善かもしれない。君を助けたいなんて言うのも、自己満足かもしれない。……でもこれは」
ぎゅっと握り拳を作る。
真っ直ぐにを見つめる彼の瞳に迷いはなかった。
「コレは、僕が選んだ道だ。どう言われたって構わない」
ハッキリと言った。
は目を細める、なぜだか彼が酷く眩しく見えた―――。
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UP/06.02.15