ジェームズ等は目を丸くした。
23.愚者
まさか味方の弱みを売ってくるとは思わなかったからだ。
「驚いた? でもね、僕は彼女と同郷の幼馴染であって味方になった覚えはないんだよ」
クスクスと笑う姿が、馬鹿にされているようで頭にくる。
「はね、ちょうどこのぐらいの薄暗さと黒髪灰眼が苦手なんだよ」
「黒髪と灰眼…」
「って、シリウスみたいな容姿のこと?」
そう、は頷いた。
「でも今まではそんな素振りはなかったぞ」
「“今までは”ね」
ジェームズはの言うことがイマイチ理解できなかった。
それでもは変わらず笑顔でいる。
「君は、何を考えているんだ…?」
その問いかけに、の笑みはピタリと止んだ。
そのまま、ジェームズとは違う深海のような透き通った二つの青が、真っ直ぐとこちらを向く。
「友の情報をその敵に渡しても、その友を陥れるだけだ。それば僕らの利益で君には何の利益もない。いくら味方じゃないと言っても、君とアイツは仲が良いのだろう? むしろこの行為こそが変じゃないか。どうして情報をくれる? 何のために? 何を考えている…。いや、―――何を企んでいる?」
無表情のまま、は暫く何も言わず、考えるような仕草をした。
その後ゆっくりとその口が動き、声が発せられる。
「これから先、どう転ぼうとも結果的にはハッピーエンドだし。あえて利益の答えが欲しいならそれは、僕にとっての快楽だ」
の言った快楽という言葉に、ジェームズ等は顔をゆがめた。
「君は…、自分の利己的満足のために動いているって言うのか?」
リーマスの台詞には、驚いた表情をしてみせる。
「君たちは違うのかい? を痛めつけて、このホグワーツから追い出そうとしているその行為こそ、利己的満足じゃないか」
「違う、俺たちはのために…っ!」
シリウスの言葉が詰まる。
の眼の鋭さが更に増し、その恐怖に声が出せなかった。
「詭弁だねぇ。『のため』? ただ君たちはを傷付ける決定的な理由が欲しいだけなんだろ? 嫌いだから、と言うだけの行為は下衆でしかないが、誰かのために、という理由はその行為を正当化させる。のためだなんて言って、君たちはを利用しているだけじゃないか」
「そんなこと「無いって言える?」
リーマスの言葉を続けるように遮った。
リーマスは自分に向けられたその瞳に、身体が竦んでしまう。
「それは、言えなかったんだ! アイツのせいで!!」
それでもジェームズが声を荒げた、自分達は間違っていないと信じて。
は肩を竦めて見せた。
「君たちがどうとろうと、それは君たちの勝手。何が正しくて何が間違いなんて、何処にも定義はない。でもね、―――知ってる? 君たちみたいな人をどう言うか」
その唇が綺麗な弧を描く。
「偽善者」
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UP/06.02.12