次の日のこと、シリウスは酷く荒れていた。



21.計画



それはもぅ、仲間に当たり散らすほどだ。
原因はもちろん昨日の“アレ”だ。

「(何でアイツをと間違えるんだよ…!)」

ガシガシと頭を掻きむしった。
シリウスはと見間違えた自分が許せないのだ。

「(全然似てないじゃないか!!)」

確かにあの二人の容姿は、双子かと疑うほどに似ていない。
だが、あの時おぼろげな眼で見た彼女は、本当に良くに似ていた。
矛盾する記憶と感情に、往来である廊下の中央に座り込んだ。

「何やっているんだい、こんな処で」

フッと、影がおちる。
見上げればジェームズが呆れた顔をしてシリウスを見下ろしていた。
その隣には同じようにリーマスも。
シリウスは機嫌の悪い犬のように、ウゥと唸る。
ジェームズはそんな彼を片手で立ち上がらせ、人目を阻むよう廊下の陰に引き込んだ。
そこにいたピーターが辺りを見回してから、杖を壁に向ける。
壁の煉瓦をそれで何回か叩くと、大きな扉が現れ四人はその中へと入る。
しまった扉は姿を消して、再び元の壁へと戻った。



「で、どうするの?」

壁にもたれ掛かり腕を組んで、リーマスが小声で聞いてきた。
シリウスは「あぁ?」と、眉を顰める。
ジェームズは大きくため息をついた。

「だぁかぁら、“アイツ”のことだよ。いつやるのかって!」

理解したのか、考え込んだようで暫く何も言わなかった。

「…た」
「え?」

呟くシリウスに二人して聞き返す。

「明日、やる」

二人はキョトンと、目を丸くした。

「そ…、それはまた。随分と唐突なことで…」

ワンテンポ遅れてジェームズが、続けてリーマスが言う。

「僕達は別に構わないけど?」

問いかけるようにジェームズに同意を求める。
ジェームズは力強く、その側でピーターが途惑いながらもいつものように頷いた。
ジェームズが音を立てて胸の前で両手をあわせた。

「よし、そうと決まれば作戦会議だ」
「んなもん、いるかよ!」

今にも噛み付かんとばかりに、シリウスは本当に機嫌が悪いようだ。
冷静さを失っている彼の頭を、宥めるように軽く叩く。

「熱血直情行動型、だから君は犬なんだよ」
「な…っ?!」
「作戦なくして成功はあり得ない、争いの影に智者あり」

リーマスが間髪入れずに黙らせる。
ひそめく様に、ジェームスがシリウスの肩に腕を回す。

「作戦もなしにアイツを痛めつけれるか?やっかいな術を持っているというのに」

シリウスは認めたくないものの、ゆっくりと頷いた。
ようやく落ち着いてきたようだ、ジェームズは口角を上げる。

「まずは何処でやるか、だ」

ローブのポケットから地図を取り出して、みんなに見えるように机の上に広げた。
既に術は施してあるようで、しっかりと自分達の名前が刻み込まれている。

「僕はココで構わないと思う」

人差し指で、今いるこの部屋を指差した。





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UP/06.01.15