僕達は間違ってるんだと、思う―――。



18.三者



=白鳳は嫌な奴だと、シリウスが言った。
ジェームズもリーマスも、それに頷く。
僕はその場にいなかったから、よく分からなかったけど。
彼らが、特にリーマスがそう言うからそうなんだと、思っていた。

でも、それは違うと思う。

僕は偶然図書館で、=白鳳と=白鳳が――あ、スネイプもいたっけ。
仲良さげに勉強していたのを見た。
三人に見つからないように、本棚の後ろに回って会話を聞いていると、シリウス達のは勘違いで二人はとても仲の良い双子だと解ったから。

だから僕は、彼女を虐めるなんて出来なかった。
でも、彼女を虐めるシリウス達を止める事も出来なかった。
彼らに異議をたてれば、彼らに嫌われてしまうんじゃないかと、凄く弱い僕。
ただ彼らの陰に隠れて、彼らのする事を見ているだけの僕はとても卑怯で。
彼女に対して僕は、彼らより酷い事をしてるんだと思う。



二人がホグワーツに来て二ヶ月が経った、に対しての虐めは日常化していた今日。
夕食の時、慌てて大広間を出た彼女を僕達は追った。
あまりの足の速さに途中で見失って、一度獅子寮まで地図を取りに戻った。
地図を見れば思ったより近くにいて、急いで駆け出す。

「止めろ!!」

シリウスが叫んだ。
獅子寮生の女子が宙に浮いて、その下に――日本魔法だろうか――紙が円を組んでバチバチと光を放っていた。
雰囲気から、彼女が良くない事をしようとしている事だわかった。

駆け込んできたが叫ぶ声に、間の抜けた返事がして。
=鹿鳴館だった。
とよく一緒にいるし、前にシリウス達を一発で伸した事があったから覚えている。

彼はに何かすると、僕の名前を呼んだ。
は気絶しているみたいで、保健室へ運ぶように頼まれる。
を担いで、僕と同じくらいの身長でも人一人は重くて、こんな時シリウスみたいに力が有ればと思ってしまう。

を保険医のマダムに預け、急いで戻ってくると、女子達は泣きじゃくりシリウス達が呆けていた。
の姿はない。
シリウス達に声をかけたが、女子達の泣き声が煩くて僕の声は掻き消されてしまう。

「煩い!」

僕が声を荒げたのが珍しかったのか、彼女らはピタリと泣きやみ彼らも我に返ったようで。
の事を尋ねると、やっとの事で動き出した。
彼らの後を追い、途中所々地図を使って達の足取りを辿る。
気付いた時は校舎の奥の方まで来ていて、達の姿が見えて僕達は柱の陰に身を隠す。
耳を澄ましたけれど、話し声は小さくてよく聞こえなかった。
身を乗り出せば見つかってしまう、もどかしい気持ちでその場にいた。

「畜生、透明マント持って来りゃぁよかった…」

シリウスが悔しそうに呟く、チラリと上目で彼を見た。
以前に負けたこともあってか、迂闊に手が出せないようだ。
の声が、少し大きくなって耳に届いたので僕は視線を戻す。

「だって、だって私! あの時!」

何でだか僕は、この先を彼らに聞かせちゃいけないと思った。
でも、思うのが遅すぎたんだ。

が傷付けられてるって知った時! いい気味って思った!!」

彼女の悲痛な叫びが、この静かな廊下に響き渡った。
シリウス達を見れば、驚いた顔をしていたけれどすぐにそれは怒りへと塗り替えられていった。
握り拳をつくって、ワナワナと震えている。

「やっぱりね…」

リーマスが呟く、その声が恐ろしくて僕は彼の顔が見れなかった。
ただ言えることは、この時の彼の雰囲気は狼の時とよく似ているということ。

「…行こうぜ」
「っ、シリウス! いいのか?!」

シリウスは踵を返した。
彼だったらすぐにでも殴りかかるんだろうと思ったから、今の行動に目を疑った。

「今はのほうが心配だ。それに…」

ギラリと、彼の目が光った。

「アイツは、後で俺が必ず叩きのめす…!」

静かに言ったそれは、怒りがヒシヒシと伝わってきた。
リーマスもジェームズも、そんなシリウスに黙って頷きついて行く。
僕だけが、動けないでいた。

「ピーター?」

リーマスが振り返って、一向に動かないでいる僕の名を呼んだ。

「僕は…、後から行くよ。彼らが何かしないか見張ってる」

いつもみたいに、どもるわけもなく、やけに冷静な言葉が流れた。
リーマスは少しだけ怪訝そうな顔をしたけど、すぐに元に戻って頷くと先に行く二人の元へと駆けて行った。





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UP/05.12.19