朝、目が覚めれば部屋には自分一人だけだ。



13.始動



同室の子達は、ここに来た初めは良くしてくれたが、今では口を聴く事おろか顔を合わせる事も無くなっていた。
時計を見れば、短針は九時を回っており、やってしまった、と頭をかく。

「夜更し、過ぎたかしら…」

今更サボリなど、どうということは無いのだが、後一ヶ月もないと考えるとサボリの時間が惜しかった。
十一月に入って急に冷えだしたココは、部屋の中でも息が白くなる。
はカーディガンを羽織り、洗面台へと向かった。
蛇口から流れる水は指すように冷たいが、無感情に手に溜め顔を洗う。
その冷たさで覚醒したは、鏡に映った自分を見つめ、前髪をかき上げた。
生え際が少しだけ黒くなっている。
髪が伸びたのもあるが、二ヶ月間何もしていないので色が落ちたのだろう。
染め直そうとも考えたが、ココには染め具もないし、染め直すとしたら今日一日を潰してしまう事になる。
大して目立たないだろうと思い、タオルで濡れた顔を拭き、その場を離れた。



「おかしい…」

は呟いた。
獅子寮のテーブルを眺めながら、視線だけ流して当たりを見回す。

?」
が…、いない」

獅子寮の何処を見ても姉の姿が見えない。
一日三食が基本であるが、夕食を取らないというのは考えにくい。
他寮のテーブルにいてもあの容姿だ、見つからない筈がない。

嫌な、予感がする。

、ごめん。私…」

言い切らないまま席を立ち、駆けだしていた。
大広間を出ると、ポケットから紙を取り出し、走りながらも器用に折る。

の処まで」

出来上がった鳥のようなそれを、手の平に乗せ、フッと息を吹きかける。
するとそれは、何かに引っ張られるかのようにの手から離れ宙を駆けた。
はその後を追う。



式神が、途中一回転してスピードが落ちたのを見て、顔をあげて辺りを見る。

初めに眼に飛び込んできたのは、数人の女子がボロボロになっている一人の女子を取り囲んでいるところだった。



視界が、一瞬だけ揺れるのを感じた。





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UP/05.12.08