が来て既に二ヶ月が過ぎていた―――。



12.前日



は暗いこの談話室で、必死に自分の作ったテストにペンを走らせるを見つめていた。
今は夜中の一時、既に全員が部屋へと帰っている。

と、が顔を合わせなくなって二週間。
は、あれから図書館には行かず、に勉強を教わっていた。
図書館に行けばに会う確率が高いからだ。
セブルス自身もあの事があってから、元々約束はしていないし図書館に誘うという事は無かった。

はどういう経緯があってそうなったかは、自身には聞いていないが知っている。
の肌には傷が一層増えていた。

自ら敵の目の前に出て姫を護るその様は、正に盾なのだろう。
しかし、それが本当に盾の役割なのだろうか。

そう考えていたが、口は出さないでいた。
コレはが決めた事なのだから。

カリカリと、紙を擦る音を耳に、手にしていた本のページをめくる。

「できた…」

コロンと、転げるペンの音と、長いため息をつく
はフッと笑って本を閉じる。

「お疲れ様」

解答用紙を受け取ると、手早く丸付けを始める。
はその様子を、ドキドキと眺めていた。
時間にして二・三分だろうか、はニッコリと微笑んで解答用紙をこちらに向けた。

「全問正解、四年の範囲終了、おめでとう」

わぁ、と机に突っ伏す

「やぁっと終わったぁ〜…」

ココに来る前に、確かに予習はしていたものの、あまりの量には「もぅ、勉強したくない。」と、初めて漏らした。
まぁ、本来八年かけて学ぶものを三ヶ月で習得しようなど、無理な話なのだが。
それでも体を起こして、背もたれにもたれ掛かりながら、机にある本を手に取る。
それをパラパラとめくって深いため息をついた。

「この調子じゃあ、間に合わないわね」
「夏休みに入ったら教えに行ってあげようか?」

がそう言うと、は嬉しそうに頷いた。
そんなを見てクスリと笑うと、の手から本を奪ってその他の本と一緒にまとめる。
それを片手で担ぐと、もう片手を机について席を立った。

「もう寝たほうが良い、明日も早いんだろう?」

の額にキスをして手をヒラヒラと振る。

コレにはも最初は驚いていたが、三年間もイギリスに住めばこうなってしまうものだろうと、変に納得していた。

は頷いて「おやすみなさい。」と、一言言って女子寮の階段を上っていった。
それを見届けたは、クッと喉を鳴らせて口角をあげる。

「さぁてと。明日が楽しみだ」



とても愉快そうに呟いたそれは、誰も知る事はない。





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UP/05.11.27