いつものように、いつもの図書館に行き。
いつものように、中に入り。
いつものように、いつもの席へ向かう。
いつもの席には、いつもの二人が居た。
いつものように、が手を振ってくれた。



09.変化



の隣にはセブルス・スネイプが居て、その情景はいつものと同じモノ。
二人と違い、自分は約束している訳ではないが、闇魔術の防衛術も得意だった彼に、は知らずうちに頼るようになり、自然と一緒になっていた。
が席に着くやいなや、はマグカップを机の真ん中に置く。
何事かと思って見ていると、は一つ咳払いをして杖を掲げた。
呪文を唱えて杖を振ると、柔らかな光がカップを包み、見る見るうちにそれは真っ白な兎へと姿を変えた。

「すごいじゃない!」
「でしょっ」

に褒められて嬉しそうに笑う。
自身も、魔法薬学の次に苦手だった変身術が出来たを誇らしげに思う。

そんなことでさえも石は積もる。

机の上の兎は、ふんふんと鼻をひくつかせた後、ぴょんっと飛び降り跳ねてゆく。
は慌ててその後を追いかける。
その後ろ姿を見て、残された二人はクスクスと笑った。

「笑った顔は似ているな」

セブルスがそう言って、動きが止まった。
ゆっくりと、今の表情を変えないように彼に向く。

「そ、う…かしら…」

途惑いながら返したそれに、不自然なところは無かっただろうか。

似ていると言われたのは何年ぶりだろうか。
幼い頃は見分けがつかないと言われていたけれど。

十歳の時に髪を切って。
十一歳の時に性格の違いが出てきて。
十二歳の時には、とうに背を追い越していて。
ここに来る際に、髪を紅く染めた。

本当に一卵性なのかと、疑うくらいに姿を変えた自分。
そんな自分を、と似ていると言った彼。

は少し考えて、「あぁ」と呟いた。

「貴方は、が好きなのね」

自分で言って、自分の中に石が落ちる。

嫌な気分になるのを必死に押さえた。

肘をついて、顎を手の甲に乗せてそう言うと、彼は耳まで真っ赤にさせた。

「なっ…!」
「だってそれだけのことを見ているのでしょう?じゃなきゃ、私をと似ているなんて言わないわ」

真っ赤な顔をしている彼を、クスクスと笑った。
その感情は、まるで母親が息子の成長を喜ぶようなモノに、少し、似ていた。

―――あぁ、気持ち悪い。

「……っっ!」
「そうなんでしょ?」

パクパクと、金魚みたいな彼に問い確かめる。

―――聞きたくないわ。

「…あぁ」



反吐が出る。



消え去りそうな声で肯定の言葉を発した彼に、は「やっぱり」と満足そうな笑みをした。

「貴方なら任せられるわ」
「え……」
「ちゃんと掴んでいてね」

そう言うと、彼は眉を顰めた。
は今だ兎を追っているを見て、目を細めた。

「貴方には、教えても良いわね……。の過去を」





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UP/05.11.13