「ちょっと良いかしら」

呼び止められて、振り返ればケバイ女子が三人。



05+.月影



乱れた服装に、ジャラジャラとした装飾品。
魔法界でも、こんな人物が存在するのかと、は思った。

何とか着けられていたネクタイから獅子寮生だと認識できる。

どうして今日に限って、次から次へと来るのだろうか。
ため息をつくと、そちらへと体を向けた。

「何か用かしら?」
「何かじゃ無いわよ!」
「“私達の”彼らに近づかないで欲しいわ!!」
「そうよ、変な色目なんか使っちゃって!」

声を荒げて言う女子に頭を抱える。

どうしてココの人達は、こうも被害妄想が強いのだろうか。
先ほどの出来事を見ていた様だが、近づいて来たのは彼らであって、私ではない。
噂も聞いているだろうに、どこを見たら私が彼らに色目を使ったのか。
使うわけが無いじゃないか!
“私達の”と言っているが、彼らがいつ貴方達のモノになったんだ。

言いたい事が山ほどとあったが、これ以上面倒くさい事は疲れる。
は早々と立ち去る為、空を見上げた。
夜の空は雲一つ無く、銀色の月が強く輝いていた。

「今夜は月が綺麗ね…」
「はぁ? 何言って…っ!」

女子生徒はの冷たい目に身を強張らせた。
は数本、自分の髪の毛を抜き取ると、フッと息をかける。
針の様に、ピンと尖ったそれを彼女らの影に投げつけた。

「きゃっ!」
「な、何…!?」

慌てふためくが、足が地に縫いつけられた様に体が動かない。
その姿は余りにも滑稽で、は薄く笑った。

「しばらくそうしてなさい。運が良ければ朝までに動ける様になるわ」

そう言い残して、くるりと身を返して寮へと帰っていった。





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UP/05.11.04