03.片割



、どうかした?」

夜、一番賑わう大広間の夕食時。
目の前には多種多様の料理とデザートが並んでいる。
リリーはそんな中、一口も食にしないを心配してのぞき込んできた。

「これ、食べないの? 昨日好きだって言ってたじゃない」

そう言って、パンプキンスープを勧めてきたのは、
二人ともと同室である。
新しく入った仲間を可愛がっていた二人は、昨日と今日とで様子の違うを気にかけていた。

「ごめんね、ちょっと食欲なくて…」

そう、答えたに、ジェームズ達は互いに視線を交わして頷いた。



寮について、ジェームズら三人はピーターも含め、誰もいなくなった談話室にいた。
に対しての今後の対策を練る為だ。

「問題は、あの変な魔法だ」

ジェームズは大きくため息をついて、椅子の背も縦にもたれ掛かる。
型の古いそれはギシッ、と音を立てる。

「『言霊』だよ」

声がした方へ振り向くと、階段の下にが立っていた。

「コトダマ?」
「言霊は日本の魔法の一つ、言葉に力を加えて、相手に聞かせる事で支配するの」
「日本の奴、みんな使えるのかよ」

ゲッ、ともらしたシリウスに、は淡々と続けた。

「一応使えるけど、言霊は精神力の差だから。自分より相手の精神が上回っていると作用しないの。ジェームズ君とリーマス君は最初から油断してたし、シリウス君は精神に揺らぎが出たから―――」

そこで言葉が止まる。
シリウスはあの時の事を思いだし、柄にもなくどもっている。
は少し考え込む様な仕草をしてシリウスへと向かった。

「あたしに好意を持ってくれるのは嬉しいけど、シリウス君と知り合ったのも昨日が本当、初めてだし。そう言う対象に見れないの、ごめん」

それだけ言うと、女子寮へとかけていった。
の姿が見えなくなって、シリウスの心の中は悲しい風が吹き抜けた。

「振られたね」
「振られたな」
「あ、その…」

今の現状を明確に言ったジェームズとリーマス、かける言葉が見つからずまごついているピーター。

「(まぁ、こんな事ぐらいで、諦めないだろうけど)」

それども三人の考えは同じだった。



自分の部屋に戻ったは、扉を開けて中を見回した。
幸い、リリーもも、すでに眠っているらしく、二人の小さな寝息が聞こえた。
一直線に自分のベッドへと向かい、倒れる様に飛び込んだ。
は再びあの時の事を頭に巡らせ、の言葉を思い出した。

―――私の事、弁解しなくて良いからね―――

「なんで……?」

再び涙が流れた。
今日は泣いてばかりだと、少し笑って枕に自分の顔を押しつけた。
嗚咽が漏れない様に。

「何でなの、ちゃん」

いつも貴方は自分を犠牲にする。

は心の中で叫んだ。

あたしが気づいてないとでも思ってる?
双子なのに、貴方は何も言ってくれない。

「あたしはまた、貴方に守られているだけなの……?」





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UP/05.10.25