nostalgia
彼と初めてあったのは、十二歳になったその時。
隊長ばかりの集会で、零番隊隊長に任命されてのことだった。
私より少しだけ小さな背に、斬魄刀を背負って上目遣いで睨まれた。
少しびびったけど、その白雪のような銀の髪が忘れられなかった。
二度目にあったのは初めてから五ヶ月が過ぎていた。
十番隊副隊長の乱菊さんにお呼ばれして遊びに行った時。
他の隊の棟に足を入れるのは初めてでドキドキだったのを覚えている。
少し道に迷いながらもやっと着いたとき、そこにいたのは乱菊さんじゃなくて彼だった。
三度目にあったのはそれから一週間後。
大きな仕事を終えて、嬉しくて乱菊さんに報告しに行った時。
正直に言えば、彼に会いに行った時。
彼に面倒くさそうにあしらわれたが、乱菊さんの一言で舞い上がった。
「あれは隊長の褒め言葉ですよ」
二人で遊ぶようになったのはあれから一ヶ月後。
ハッキリと言えば、私が連れ回してたのだけど。
よく現世に行って、現世の遊びをした。
その時彼が初めて笑ってくれた。
彼に涙を見せたのは十三歳の時。
私がまだ生きていた時のことを思い出して。
家族や親友がいたけれど、もう会えないのだと確信して。
私を照らすあの丸い月が寂しくて。
悲しくて悲しくて、涙を流していた時。
彼は、ただ泣いている私を黙ったままで側にいてくれた。
その時初めて握った手が熱かった。
人を初めて好きになったのは十三歳の夏。
夏風邪はバカしかひかないと、バカにされた。
ふて腐れて寝ていると、彼が息を切らして部屋に入ってきて。
何事かと思って飛び起きれば、目の前にはレモンシロップのかき氷。
私の我儘を、覚えていて。
しかも作って来てくれたことが嬉しくて、嬉しくて。
初めて告白されたのは十四歳の時。
彼からの告白が信じられなくて、すぐに返事が出来なかった。
だって、私だけが好きで。
彼を振り回している私のことなんか、好きになってくれるとは思わなかったから。
初めてキスをしたのは付き合い始めて一ヶ月。
どちらともなく自然にしたそれは、とても恥ずかしかった。
でも、ふれた唇がとても優しくて。
その後の彼が、耳まで真っ赤にしていたのが可笑しくて。
―――あの時の私は幸せでした。
幸せで、幸せで。
ドキドキで、嬉しくて、楽しくて、悲しくて、恥ずかしくて、可笑しくて。
幸せで。
十五歳の時。
その幸せを。
私は忘れてしまった―――。
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UP/05.11.13