期な自分



某日某所、幻影旅団アジト、昼のこと――。
そう、昼。
太陽が未だ地をさんさんと明るく照らしている昼間なのだ。
そんな昼間から異様に盛っているアホがいた――。

「あー、sexしてぇー……」
「昨日、僕としたじゃないか◆」

耳を塞ぎたくなる様な会話をしているのは旅団の一員であるヒソカと、その友人のだった。
は旅団員ではないが、ヒソカの友人と言うだけでよくアジトに入り浸っている。
誰も文句を言わないのは皆が彼の実力を認めており、何より団長のクロロが彼のその人柄を気に入った為である。
「地獄の沙汰も金次第」、は金さえ出せば何でもする万屋だった。

いつもの様に、当然だとそこにいるは椅子の背もたれにもたれ掛かり天井を仰ぎながら言った。
それにヒソカがいつもの妖しい笑いを含めながら返す。
頭を起こしたは、じとりとヒソカを鬱陶しげに睨む。

「お前は、偶に喰うからウマイんだよ。毎日じゃ飽きるっつーの」

シッシッ、と手で払う振りをする。
ヒソカは「酷いなぁ〜◆」と言いながらも傷ついた様子はカケラもない。

ちなみにもヒソカも男である。
所謂「バイ」と呼ばれるところに属する者達だ。
相手が男でも構わない、気に入った者は片っ端から喰っている、それも暇つぶし程度で。
なんて自分から誘わない限り、金も取るもんだから手のつけようがない。

「風俗には行かないの?」

「駅前花嫁」を人前で読むだけはある。
いや、元々そういう感情が欠落しているのだろう。
恥じらいもなくシズクが言った。

「別に行っても良いんだけど、あいつらスマタ止まりだし。いやね、中には入れれる所もあるよ? だけど、俺がスルのになんで金払わなダメなん? みたいな」

さすが金の亡者だ、金は取っても出しはしない。
そこで流すシズクもシズクだ。

大きくため息をついたは、武器を磨いているフェイタンをチラリと横目で見たあと擦寄ってきた。

「フェーイターン、sexしよーよー」
「冗談じゃないよ、なんで私が男のお前とsexしなきゃならないね。そこらの馬鹿でも強姦してればいいよ」

を押しのけながら吐き捨てる。
それもそうだ、フェイタンは拷問好きでもそういう気は無い。
当然の扱いである。

そんなフェイタンには頬を膨らませた。

「強姦も良いけど! 俺が好きなのはフェイタンなの!!」

そう、所構わずヤっているにも本命はいる。
先ほど言い放ったフェイタンだ。
何やら一目見てフォーリン・ラヴだとか。
ちなみにこのことは、がアジトに来るたびフェイタンに言い寄っている為周知の事実である。

「フェイタンがヤらしてくれないから、俺が溜まって他の馬鹿女や馬鹿男とヤんなきゃなんねぇの!」
「そんなこと知らないね」
「ヒドっっ!」

よよよ、と泣き真似をしてもフェイタンは興味なしのようだ。
そんなを見てシャルナークが笑った。

「本当、って変態だよね」
「オイこら待て」

ガバリと体を起こすとシャルナークを睨む。
そして、いつの間にか一人でトランプタワーを作っては壊しで感じているヒソカを指差した。

「俺様を、あんな育成マニアの変態マゾと一緒の属性にするな! 俺は博愛主義であって変態でないの。Do you understand? あ、でも今はフェイタン一筋だから安心してね」

ニッコリ微笑んでフェイタンを見る。
がしかし、フェイタンはそっぽを向いていた。
顔を覗き込んで声をかけても反応がない。
どうやら、いちいちの相手をするのが疲れた様だ。

「もしかして機嫌悪い? ハッ、まさか女の子の日!? フェイタン女の子だった? ヤッバ、俺就職して養わな!」
「誰がだ!!」

ゴン、といい音がしては頭を抱えうずくまった。
珍しくフェイタンが肩で息をしながら握り拳を作っていた。

暫く悶えていただが段々と温和しくなると、ムッとした顔つきでフェイタンの頭を掴みこちらを向かせる。

「何する……」

声が出ない。
フェイタンの目の前にはの顔、唇には柔らかい感触。
正にこれは……。

「んー――!?」

キスされていた。
逃げられない様に腰に腕を回し、しっかりと抱き留められている。
何とか押しのけようとも、力も能力も身体も劣っているフェイタンが敵うはずがない。
はそれを尻目に少し離れて角度を変えてからもう一度重ねると、今度はムリヤリ口を割って舌を入れた。
ぬるりとした感触に小さく反応してしまう。
それに気をよくしたのか、はどんどん口内を犯していった。

「んっ…、ふ……!」

とてもフェイタンが出したとは思えない声に、団員(ヒソカとシズク以外)は二人から目を反らした。

「――〜っ!」
「痛っ……」

舌を思い切り噛まれは口を手で覆う。
端から流れる血を拭うとフェイタンを見据えた。

「フェイタン、解ってないよね」

突然のソレにフェイタンは怪訝な顔をする。
は続けた。

「今まで俺がフェイタンにsex要求したことあった? ないよね、付き合ってとは言ったことあるけど。やっぱさ、好きなことは付き合ってお互いに順踏んでってのが良いじゃん。で、俺の言ってる意味解る? 俺、今かなりヤバイわけ。大好きなフェイタンに迫るほど。なのにそんな態度とるんだ。ふーん、へー、ほー。今犯す、ぜってー鳴かす
「はぁ!?」

はフェイタンを担ぎ上げると奥の部屋へと向かう。

「フェイタン言ったもんね、強姦すればって」
「それは馬鹿のことね! 私じゃないよ!!」

得意の念もに触れられている以上、出せやしない。
抵抗してみたがものともせずで。

「んじゃ、クロロ。ちょっくらヤってくるから邪魔するなよ」
「……仕事に支障が出ない程度にな」

睨みを利かせたに、クロロは目を反らした。
今逆らえば自分もフェイタンと一緒に喰われるだろう。
関わらないのが一番だ。

「団長!!」

フェイタンの叫びも虚しく、無情にも扉は音を立てて閉まった。






UP/06.06.07